優美
事業所紹介
法人名:社会福祉法人実践
事業所名:特別養護老人ホーム優美
住所:三重県津市白山町二本木字山わき4009-3
利用者数:入居者60名(各ユニット10名)
職員数:42人

伴走支援依頼時の課題
施設の立地地域が山間部に位置し住人が少なく人材の確保に苦慮していました。そのために、働きやすい職場を作ることで人材の確保や定着につなげたいと考えていました。
まず現在の施設の問題点を明確化し、ポイントをしぼって課題を抽出するため、生産性向上ガイドラインに基づき、職員アンケートや発見(気づき)シートを収集しました。
浮かび上がってきた問題点から因果関係図を作成し、以下のような課題に取り組みました。
- 話し合いの場が少なく、情報共有が不足していると感じている職員が多い。
- 慢性的な人員不足が発生している。
取り組みを行うにあたって、『現場力向上委員会』を立ち上げました。
■ICTを利用した情報の統一化
話し合いの場が少なかったり、職員間のコミニュケーション不足が原因で、職場が嫌な雰囲気になり、退職につながる事もありました。
そこで情報共有方法を統一化し、適切な方法で円滑なコミニュケーションを取ることで、職員間の風通しを良くし、サービスの質の向上を目指しました。
■方針の明確化
理念、支援方針、行動指針は以前からありますが、浸透しておらず支援がばらばらになっていました。
なぜ理念が大切なのかということを確認し、方針を具体化・標準化することにより、職員が同じ方向を向いて介護支援を行うことを目指しました。

プロジェクトチームには経営者、管理者、
コンサルタントを含めキックオフ

気づきシートから因果関係図を作成
情報の偏りを無くしスピーディに共有する
■実施したこと
- 介護ソフトでの連絡・申し送りを施設の決め事とし方法を統一化しました。
- 以前導入したものの利用が継続できていなかったビジネスチャットツール(LINE WORKS)を再度本格的に利用することにしました。
各部署、同職種、各ユニット等の各グループでリアルタイムでの相談や報告ができるようにしました。 - 記録ソフト付属の掲示板機能を使用していくとともに、あえてアナログ(ホワイトボード)での情報共有手段を残し、イレギュラーな情報共有もスピーディーに多職種で行えるようにしました。
なお、どのユニットでもホワイトボードの内容は統一化することで、誰がどのユニットに行ってもどこを見ればよいかが分かるようにしました。
■工夫したこと
ICT利用を苦手とする職員もいるため、専用の介護ソフトの操作手順書を作ったり、使い方の研修を開催しました。
また、ICT利用を得意とするメンバーで、使用に関する問題点を小まめにヒアリングし、細かく手順書を改定したり、介護ソフトの設定を変更することで、小さな改善を重ねました。

介護ソフト付属の掲示板使用マニュアル
■苦労したこと
ビジネスチャットツールは手軽で使いやすいのですが、勤務時間外の職員にも連絡が来たり、チャット内で攻撃的な議論が始まってしまうことがありました。そのためのルール整備も必要になりました。
■結果
施設内での情報共有方法が統一化されることにより、他職種との連携や、ユニット間での連携も取りやすくなりました。
とくにイレギュラーがあるときの、ユニット間での人員のサポート等での連絡がスムーズになりました。

ユニットごとに異なっていた
ホワイトボードの内容を統一化

リーダー
情報共有方法が統一化されることにより、施設内の動きがわかりやすくなりました。それにより、多職種との連携がスムーズにできたり、他のユニットへのヘルプに入りやすくなりました。

ICTツールを利用しての申し送りに関しては、消極的な職員も多くいるため、丁寧な指導とフォローを心がけてます。今後、新しいICT機器を導入するにあたっての礎になればと思っています。『現場力向上委員会』を立ち上げたことにより、ボトムアップにつながってます。
「なぜ理念が必要なのか」を理解する
■実施したこと
「なぜ理念が必要なのか」を理解するために理念研修を行いました。
理念があってその下に行動指針がありますが、理念や行動指針は抽象性的な表現であるため、さらに具体化・細分化し具体的に実践できる方針を作成しました。
■工夫したこと
学んだことを具体的な行動に反映しやすくするため、理念研修は、各ユニットリーダーがユニット職員に自身の言葉を添えて行いました。
行動指針の細分化は、まず委員会内で行い、多くの意見の中で、多くの職員が納得できるものにしていきました。
■苦労したこと
ユニットリーダーが自身で理念研修を行えるように、ユニットリーダーに学んでもらう時間を捻出することに苦労しました。
■結果
施設の理念を意識することにより、新しい取り組みなどの変化にも職員の受け入れが良くなりました。行動指針をより具体的した方針を作成することにより、見解の相違が少なくなり、支援の統一化、ケアの質の向上につながりました。

抽象的な理念から落とし込んで具体的に実践できる方針まで見落とし込む作業を行った


リーダー
ユニットリーダーの中には、人前で話すことが苦手な人もいましたが、ユニットリーダー同士でアドバイスを出し合い、研修を行うことができました。支援に迷ったときは、理念、支援方針、行動指針に照らし合わせ“なぜ”“誰のために”それをするのかを忘れないようにしたいです。

理念、支援方針、行動指針、マニュアル等必要なものは整備してきましたが、それらがなかなか浸透しないことにもどかしさを感じていました。繰り返し丁寧に伝えていくことの必要性や、現場で指揮するユニットリーダー自身の中にそれらを落とし込むことで、全職員により浸透していくこと期待しています。
今後や生産性向上の取り組みの継続について
■継続して実施すること
更なる情報の統一化を進めるため、介護ソフトの活用と丁寧でねばり強い説明を継続して行っていきます。
■次の計画
OJTの仕組みを新たに構築します。
今後、外国人人材のスムーズな受け入れや教育を行い、人材の育成、定着に取り組んでいきます。
■取り組み継続のためにどうするか?
- ホーム長
更なるボトムアップを進めるために、フロアリーダーやユニットリーダーに積極的に展示会や外部研修会に参加してもらい提案をしてもらいたいと思っています。
外部の良い取り組みを自施設にも積極的に取り入れたいと考えています。 - 現場スタッフ
『自分たちが現場を変えていくのだ。』という意識を持って、積極的に業務改善に取り組んでいきたい。
小さなことでも積み重なると大きな改善につながることを意識して取り組んでいきたい。
■今後の目標
「魅力ある職場作り」
現場力向上委員会メンバーを中心に現場から、業務を改善できるようなICT機器等の提案を受け、少しづつ導入につなげたいと考えています。
また、外国人人材の受け入れ、育成方法を定着させ、慢性的な人材不足を解消させたいと考えています。

因果関係図の作業を多なうことで経営者~管理者~現場で同じ視点を持ち一体感が生まれた
コンサルタントから一言

当施設では課題の見える化を行うためのステップから支援しました。これは生産性向上ガイドラインにも記されている改善活動のため王道です。
課題の見える化を行わないままICT導入等に踏み切るとうまく課題が解決できないといことが往々にして起こります。
また、介護ソフトを利用している施設は多いのですが、どこまで使いこなせているかは施設によって大きく異なります。
本施設では安易に新しいICTを導入するのではなく元々ある介護ソフトの掲示板機能でどこまでできるかをホーム長が勉強し、現場の要望と擦り合わせながら掲示板機能を用いて情報共有を進めていきました。
そして、情報共有方法の「統一化」というところがミソで、これにより情報の偏りを防止し、コミュニケーション効率が上がりました。