ときの音色
事業所紹介
法人名:社会福祉法人大和高原育成福祉会
事業所名:特別養護法人ホーム ときの音色
住所:三重県津市中村町745-25
利用者数:入居者60名(各ユニット10名)
職員数:76人

伴走支援依頼時の課題
職員が働きやすい環境を作ることで人材流出を防止し、人材の採用につなげたい。とくに夜勤業務における職員の負担軽減のために、見守りシステムの利活用と夜間業務の負荷軽減、さらには利用者の個別ケアの見直しを行いたいと考えました。
■見守り機器の利活用と仕事に対する意識改革
ベッドマットレスの下に敷く見守り機器を導入していましが、全職員が目的や活用方法を理解できず、頻発する誤作動通知音や通信エラー等で見守り機器に対して、苦手意識が強くなり未使用な期間がありました。
理念である「老いを楽しく青春の今」を実現する為にICTが必要と感じ再度、見守り機器を使用し、サービスの質や生産性向上を目指しました。
■夜間業務の負担軽減と個別ケアの統一化
現在は夜勤業務では、20人の利用者様を夜勤介護職員1人で担当しており、夜間巡回を2時間に1回程度行っています。
課題として、排泄や体位変換等の支援・記録入力が業務内にできず残業する事が多く、職員の心身への負担がみられていました。
また、利用者様からは夜の訪室が多いために、ぐっすり寝れない等の意見も聞いていました。
不要な夜間業務を削減し効率化を図るために手順の統一化を行いつつ、各利用者様1人1人に合った個別ケアを行い満足度の向上を目指しました。


事前アンケートから複数項目のうち
「業務効率について」の
「ICTツールやテクノロジーの利用」
について苦手意識があることが分かった
理念から下ろしたキックオフ宣言から実施
■実施したこと
- 理念を実現する為にICT導入宣言の書面を施設長が作成し運営会議で発表しキックオフ宣言とし、個人面談時にもこれを伝えました。
- ベッドマットレス下に敷くシート型の見守り機器5台を導入済みでした。
プロジェクト前は、6ユニット全体で見守りの必要性の高い利用者様に機器を分散して使用していました。しかし、夜勤負担軽減などの効果が見えておらず導入に対して懐疑的な意見がありました。そこで、5台の見守り機器を1ユニットに集約しまずは効果検証を行うこととしました。
■工夫したこと
- ICT導入のメリットを施設内スタッフに共有するために、モデルケース(1ユニットで試験的に利用して運用実績やメリットを作り上げる)を作っていきました。
- 1ユニットの小人数チームで細かく意見を聞きながら小さな改善を重ねました。例えば、誤作動通知の原因としてシーツ交換やギャッチアップ時の機器ズレがあることが分かり、養生テープや延長コードを使用するなどの対応を細かく行いました。
- 改善活動の振り返りを職員間で共有し、日・夜勤者との報連相をより良くする為に専用の連絡ノートを作成しました。
- 見守り機器の使用方法の説明書である「機器準備シート」作りました。「機器準備シート」は用紙1枚で文字少なく写真付きで簡略化することで誰が見ても分るように工夫しました。
■苦労したこと
- ICT導入の目的を職員間で意識共有することが難しかった。
- 最初は誤作動通知が多く機器設置場所や感度の設定調整が大変でした。
- 夜勤者への機器利用のコミュニケーションの問題があったため申し送りにタスクとして入れ込みました。
■結果
見守り機器を使用してみようという意識の変化がみられるようになりました。
委員会や日・夜勤者の申し送り時、連絡ノートにて誤作動通知等小さな問題点も早期に解決できるように言いやすい環境を作ることができました。

機器準備シート

私自身夜勤が多く、見守り機器の使用説明がスタッフに中々行き届かず口頭での説明が出来なかった為、職員からの不平不満が多くありました。
対策とし、連絡ノートで細かく説明し互いの意見交換に活用しました。

何の為にICTの導入を行うのかという所の職員間の意識共有が上手くいかず、ICTに理解のある理学療法士さんに大いに協力して頂きました。
施設各部署の管理者会議で、法人理念に基づくICTの導入についての意識共有を行いました。
定期巡回を見守り機器確認に置き換え
■実施したこと
- 職員から見守り機器だけでは不安という声もみられたため、最初はあえて、転倒リスクが低く自立度が高い利用者様を選定ました。
- 利用者様から、定期巡視時に目が覚めると言う声も聞かれていた為、定期巡視の一部を見守り機器での確認にし、さらに、排泄は覚醒時に行うようにしました。
また、記録はスタッフアンケートや聞き取りを行いながら、標準化、簡略化をしていきました。 - 見守り機器から得られる睡眠データを見て各利用者の排泄支援を個別化しました。また、一部の利用者の定時の排泄支援を廃止しました。
■工夫したこと
- 見守り機器だけでは不安な職員に対しては、巡回削減を強制しませんでした。
- 記録の簡略化のため「アイコン確認・入眠中」などと記録ソフトに定型文を作成しました。
- 排泄時間シートを作成し、各利用者様に合った排泄時間を表にしました
■苦労したこと
- 機器に対して不安や苦手意識を払拭する為にコミュニケーションを行いましたが、時間を要しました。
- 下剤服薬により排泄・覚醒時間に変化がみられるときは個別の支援計画を作成するの困難でした。
■結果
巡回回数が減り記録も簡略化した事で、夜勤介護職員の心身の負担軽減や会議録作成等他業務も行えるようになりました。
また、利用者様も巡回で目覚める事がなくなり、夜ぐっすり眠れるようになった・目覚めが良くなった等サービスの質・満足度の向上に繋がりました。


最初は転倒リスクが高い利用者様に使用した為、夜間頻回にコールがあり、職員の負担が増え不満が多くありました。その為、比較的安定されている利用者様に機器の利用を変更しました。
改善後は夜勤業務負担が軽減し、明らかに夜勤明けの脚の疲れなどが軽減しました。

ICT機器の選定から導入、使用まで各部署の職員さんの忙しい業務の中での協力もありましたが、実際に使用するまでの動き出しまで、本当に根気よく伝えて確認する事の大切さを改めて感じました。
今後や生産性向上の取り組みの継続について
■継続して実施すること
引き続き夜間業務改善の統一化を図りつつ各利用者様聞き取りを行いその人らしい生活・個別ケアができるように支援していきたいです。
■次の計画
夜間業務のマニュアル作成や各利用者様1人1人の排泄以外にも就寝・起床ケア等も統一し、個別ケアを推進したいです。
■取り組み継続のためにどうするか?
- 施設長
ICTを導入していくことで、夜間訪室回数や残業の削減など職員の負担軽減につなげれば良いと考えています。職員に時間的・心理的な余裕ができることで利用者の隣に寄り添えるようになり、結果的に一番の目的であるサービスの質の向上に繋がっていけばよいと考えています。 - 現場スタッフ
見守り機器を活用し、利用者様一人ひとりの生活パターン・排泄パターンを把握し、24時間シート作成し個別ケアに役立てたいと思います。
そして職員の負担軽減、ゆとりあるケア、利用者様に寄り添えるケアを行う事で今以上に質の高いケアの提供に繋げていきたいです。

見守り機器を用いて行える
業務負担軽減や個別ケア品質の
向上に関するテーマを
毎月1つ決めて取り組むことにした
コンサルタントから一言

当施設では理学療法士の主任さんにプロジェクトのリーダーとなっていただき、主に見守り機器の使用について動いていただきました。さらに施設長(現場に任せてくれる)も巻き込むことで、現場と経営のバランスよく動けたと感じました。
また、現場のキーパーソンである介護統括主任は人員体制上夜勤も多く、日勤者とのコミュニケーションに苦労していましたが、見守り機器導入専用の連絡ノートを作成したり、日勤と夜勤の申し送りの時間に見守り機器の確認作業をタスクと入れ込むことで、コミュニケーションをとり、機器の導入促進に尽力していただきました。
最初は介護統括主任自身は見守り機器に懐疑的で、むしろ「嫌だなぁ」というくらいの気持ちを持っていましたが、最終的には「これだけ使えるなら前向きに検討したくなった」と意識が大きく変わりました。