風の路

事業所紹介

法人名:社会福祉法人 風薫会
事業所名:特別養護老人ホーム 風の路
住所:三重県四日市市塩浜栄町471
利用者数:入居者58 特養5ユニット、ショートステイ1ユニット
職員数:60人

伴走支援依頼時の課題

法人としてICTを利用し生産性向上を行っていく方針を立てました。
そして、スマートフォンを用いて記録業務を行えるような仕組みを作っていこうとしていましたが、ネットワークのトラブル等もあり、「入れれば使ってくれるだろう」ではうまくいかず、なかなか定着しない状況が起こっていました。

■スマホ用記録ソフトの利用が浸透しない

従前より記録入力はPCで行っていたため、職員はPCでの記録入力に慣れていました。そのため、なかなかスマートフォンでの入力に移行できず、支援後に一気にPCで入力するという昔ながらのオペレーションが根強くありました。
一方で、手書きや口頭での申し送りによる転記作業やモレの発生、リアルタイム性の乏しい情報共有も発生していたため、ここに課題感は感じでいました。

そこでスマートフォンで支援の場でリアルタイムで記録入力を行いつつ記録時間を短縮し、申し送りのモレをなくすことを実現したいと考えました。

■職員負担を軽減するためのPDCA体制を実現したい

昨今、ご利用者の重度化が以前よりも進んでおり、以前と同じ業務の仕方で行っていてはケア時間や業務内容は拡大する一方です。そのため、介護職員への負担が増加していました。
そこで、生産性向上への取り組み方やプロジェクトマネジメント手法を学び、PDCAサイクルを回しながら有効な取り組みを行っていく体制を実現したいと考えていました。

スマホ記録で介護の質を上げる

■実施したこと

  • スマホ記録が進まない原因をアンケートで収集しました。そこで出てきた課題をホワイトボードを用いて細分化し分析し、課題解決のために何を行っていくかを見える化しました。
  • スマホ記録のための独自マニュアルを作成し、ユニットごとに操作説明会を開催しました。
  • 定型文の登録や音声入力、連携できるバイタル測定機器からの自動入力を使用することで、文字をできるだけ打ち込まずに記録ができるようにしました。

■工夫したこと

  • 簡易マニュアルでは説明文を極力なくし読みやすくし、外国人職員でも理解出来るよう動画マニュアルも作成しました。
  • マニュアルを配っただけではなかなか使ってくれないので、スマホでの記録時間(毎日練習)を設定したり、こまめにOJTを行いました。

課題の細分化と分析

■苦労したこと

  • パソコンでの記録が定着してしまっている中でスマホを使うということに対する職員の意識改革が難しかった。
  • スマホ画面に対する抵抗感に対して利便性の理解を得るまでが大変でした。

オリジナルの簡易マニュアル

■結果

パソコンで1人が入力しているともう1人の職員は記録を待たなくてはいけない時間があったがこれが解消されました。
音声入力や文例を使用しその場で入力することで記録時間の短縮につながりました。

ユニット
リーダー

当初はスマホでの記録に意味を見出せない職員もおり、意識を変えることが一番難しかった。ルールとしてスマホを使用するタイミングを決め、毎日必ずスマホに触れるようにしたところ、その場で入力できることやバイタル連携の機能を使うことで利便性を体感し職員の意識が変化していきました。

施設長

スマホの記録ソフトを導入したものの、従前のPCでの入力というオペレーションから変化することが出来ずにいましたが、キックオフ宣言で目標を明確にしたことで施設の方針が職員に伝わり、マニュアルの
作成等、職員が主体的に取り組み、最終的にはマニュアル動画作成まで創意工夫し、現場職員と一つ一つの運用をルールを作りながら取り組むことができました。

PDCAを実現するためのマネジメント方法

■実施したこと

  • PDCAサイクルを確立するためのスケジューリング方法を取り入れました。
  • 進捗状況を把握するためのミーティングをこまめに行い、コミュニケーションをとりその都度修正を行っていきました。

■工夫したこと

  • 「いつ」「誰が」「何を」行うのかをできるだけ細かく具体的に明示することで、プロジェクトのステップのイメージを作り前に進ませられるようにしました。
  • 既存のグループウェアを活用した情報共有や、Googleフォームによるアンケート回収、Zoomによるオンラインミーティングを行うなどICTに触れる機会を意図的に作りました。

■苦労したこと

最初は職員から課題や新しいアイディアがなかなか出てきませんでした。出ても課題の内容が漠然としており内容を深堀りしながら真の原因を発見することができるようになるまでに時間を要しました。

■結果

細かな分析や評価の作業を通じて計画を軌道修正したり、全体のスケジュールを変更し、タスクに取りこぼしがないようにチェックを行える体制が出来ました。

オンラインミーティングの様子

何を、いつ、誰が行うかを明示

ユニット
リーダー

最初、生産性向上をほとんど知らないままに始める不安がありました。伴走支援で丁寧に教えていただけたことは貴重な経験となりました。
学んだマネジメント方法で今後の取り組みがより良く進めるようにつなげていきたいです。

施設長

伴走支援を通じて生産性向上への取り組み方を学ぶことが出来ました。
今回、代表して2ユニットのリーダーが手を挙げて実施してくれましたが、その姿を見て他のユニット職員も生産性向上というものを認知し興味・関心を持つきっかけになったと感じています。

今後や生産性向上の取り組みの継続について

■継続して実施すること

今回実施したスマホ記録は2ユニットで試験的に行ったため、これから全ユニットへ展開しスマホ記録を定着させていきます。

■次の計画

生産性向上委員会の立ち上げを通じ、様々な業務効率化により残業時間の削減等を目指します。
見守りカメラ等のICT機器導入を検討しています。

■取り組み継続のためにどうするか?

  • 上司
    伴走支援参加の2リーダーを中心に生産性向上委員会を立ち上げ、施設としての課題を把握し、計画の立案を行っていきます。
    また、職員に対して有益な情報を提供できるよう他法人やメーカーからの情報収集を積極的に行いながら施設見学や企業展参加を進めたいと考えています。
  • 現場
    施設全体でのスマホ記録定着に向けて具体的な計画を作成し横展開していきます。また、説明会を定期的に行うことで職員の理解を広げていこうと考えています。

■今後の目標

「魅力ある職場作り」
現場からICT機器利用の提案を受け、少しづつ導入につなげたいと考えています。また、外国人人材の受け入れ、育成方法を定着させ、慢性的な人材不足を解消させたいと考えています。

全ユニットへの展開スケジュール

コンサルタントから一言

コンサルタント

当施設では当初はネットワーク問題も起こっており、スマホを安定的にネットに繋げられないという非常に厳しい状況からスタートしていました。しかし、諦めることなく、短期目標である「スマホで記録業務を行えるようにする」を変えず、ネットワーク以外で整備が必要な部分を進めていきました。

スマホ記録を阻害している原因を収集し、さらに細分化し分析することで「マニュアルの作成」「記録の手間を減らす」「意識を変える教育」が打ち手として上がってきたため、これらを行う具体的なプロジェクトスケジューリングを行いました。

プロジェクト進行ツール(WBSやガントチャート)の利用、小さな成功を1か月後ごとに作り出すことに注力した結果、最終的には動画マニュアルまで作成することができました。プロジェクトメンバーが本気で業務を改善したいという気持ちがよく表れた結果だと思います。